“人生を良くする系”の発信やコーチングの世界では、
とかく精神的な豊かさを重視しがちです。
ところが、物質的な豊かさを疎かにしていては、
どこまで行ってもハーフマインドと呼ばざるを得ません。
それは完全ではないのです。
じゃあ、お金をたんまり稼げばいいのかと言えば、
それも半分正解、半分不正解といった感じです。
なぜなら、お金はあくまで
「人様にモノなりサービスなりを提供してもらう」
ためのツールであって、
そのモノなりサービスなりが足りなくなったり、
供給が滞ってしまったりしたら、何の役にも立たないからです。
誤解のないように申し上げておくと、
お金は超大事です。
僕もお金大好きです。
便利だし、持ってるだけでホクホクするし。笑
しかしながらリスクマネジメントの観点から見ても、
金融資産に“一点張り”というのは
実にリスキーな行為だと思いませんか?
ワインやブランデー等ならまだしも、
お金自体は食べられませんからね。
というわけで今回はリスク分散という意味での
“食べ物の自給”についてお話をしたいと思います。
あなたが本当の意味で“備えあれば憂いなし”となる、
そのきっかけになるかもしれませんので
是非とも最後までお付き合い頂ければ幸いです。
お金以外に“命を持続させる術”を持たない人々
「食べ物作れば死なないんじゃね?」
今から12年前、就職もせずにフラフラしていた僕は
上記のようなシンプルな結論に至り、農業の世界に入りました。
それから色々あって、2019年現在の僕は、
すでに産業としての“農業”からは離れています。
初志貫徹、と言うと何だか立派そうですが…
「売り物を作る」のではなく、
「食べ物を作る」を追求した結果、
今のような家庭菜園レベルの自然農を実践し、
またそれを教える事をライフワークの一つとするようになったわけです。
そういう意味ではあの日のシンプルな結論は
安直ながらなかなかに本質的だったと思います。
冒頭でお金に“一点張り”というのはリスキーだと述べました。
僕らは自然災害に見舞われる度にそれを痛感します。
主に都市部に住んでいる人達にとっては死活問題にさえ発展します。
2011年、埼玉の実家にいた僕も3.11の後は
「スーパーやホームセンター、ガソリンスタンド等にモノがない」
という状態を生まれて初めて経験しました。
(何度か輪番停電もありました)
幸いな事に生活に困るほどではありませんでしたが
これはまさに、
「Aさんは八百屋」
「Bさんは金物屋」
「Cさんは政治家」
…
みたいな感じで
分業化、役割分担していった事の最大の弊害
と言えるでしょう。
もちろんそれによって
専門家が生まれ、各々の分野が発展したのは素晴らしい事です。
それぞれの恩恵を“お金”という
皆が共通して価値を認める概念によってやりとりする、
というのも社会的な生き物である僕ら人間としては
当然の進化だと思いますし、とても効率的です。
ですが、そのためにこれまで個人や家族、あるいはコミュニティにて
自給するのが当たり前だった衣食住という、最も基本的な営みさえも
僕らの多くは外部化して手放してしまいました。
繰り返しになりますが
実はこれは途轍もなくリスキーでもあります。
お金以外に、命を持続させる術を持たないわけですから。
自給してたから生き延びられた人々
一方で、自然災害や経済危機などの非常時でも
難なく生き延びる術を持つ人々もいます。
たとえば僕の知人の話。
2014年2月に2回ほど、凄まじい大雪がありました。
(例年、あまり雪が降らない埼玉でも膝くらいまで積もりました)
その時、山梨県では山の方に住む多くの家が
雪によって孤立してしまった的な報道がされていたように記憶しています。
僕の知人一家もその中のひと家族だったのですが…
その何ヶ月か後に再会した際、
「お米も野菜も自給して蓄えがあったから全然問題なかったよ」
と彼がケロッとした顔で話していたのを今でも覚えています。
ロシアでも広大な土地を利用して大規模な農業を行う傍ら、
都市部の人々の間ではダーチャという菜園を郊外に持つ世帯が多いようです。
これは単なる別荘ではなく、
テロや経済危機などによる混乱期においては
市民が自活する生命線となるのだそうです。
なんでもロシアには
「ジャガイモ植えりゃ 国破れてもわが身あり」
という古い諺があるのだとか。
それを象徴するように、
ロシアでは1985年のペレストロイカ以降、
何度も経済危機に見舞われましたが、
驚いた事に餓死者は出なかったんだそうです。
それは国内3,400万世帯のうち8割の世帯がダーチャなどの菜園を持ち、
ジャガイモの国内生産の90%、野菜の80%を自給していたから、
と言われています。
これらの話、地味にすごくないですか?
まあ、ロシアの話については僕もネットで調べただけなので、
あんまり突っ込まれても答えられないのですが…
少なくとも食べ物を自給する事が
有事の際に僕らの命を守る手段となりえる事は
ご理解頂けたんじゃないかと思います。
自給に必要な土地面積、収穫量はどれくらい?
少しずつでも食べ物の自給にご興味を持って頂けているでしょうか?
「なるほど、自給が有効なのは分かった。」
「で、どれくらいの土地でどれくらいの食べ物を作ったら
1人あたりの食べ物を賄えるんだ?」
と、だいぶ前のめりになってきた方も、
もしかしたらいらっしゃるかもしれませんね。
ただ、自給自足に必要な面積と収穫量、
これについては一人一人食べる量も違えば、
農法によっても収穫量が違うので、
はっきりとは言えません。
ましてや現代人である我々は毎日お米だけとか、
ジャガイモだけ、というわけにもいきませんからね。
ですので、参考になるかは分かりませんが…
お米で考えると、
近代では僕らは1年間に1俵(60kg)食べるか食べないか、
といったところです。
田んぼ1反(=1,000㎡)で平均8俵くらい獲れるみたいなので、
125㎡あればだいたい1俵(60kg)獲れる計算になりますね。
これに同居している家族の人数をかけた面積があれば、
今の食生活のままならお米は自給できる事になります。
(裏作に小麦でも作ればさらに充実しますね)
ちなみに「田んぼが手に入らない!」という方は、
畑で育てる陸稲(おかぼ)というお米もあります。
(僕も一時期育てていました)
ただし、これはあくまで理論値です。
実際には気候や技術等の条件によって収量の増減があります。
「野菜の場合は?」
と思ったそこのあなた。
…えーと、すみません。
これについては僕には分かりません(汗)。
野菜こそ人によって食べる量が違うからです。
ただ、お米でも野菜でも今回の記事で伝えたいのは、
「完全自給をしましょう」という事ではなく
「少しずつでも自給をしてみませんか?」という事なんです。
それこそ1年にジャガイモ1袋とかダイコン1本とかでも
全然いいんですよ。
投資でも最初から利息だけで生活するなんて不可能でしょう?
小さな額から少しずつ少しずつ増やしていくものでしょう?
やっていくうちに、
「自給率を増やしたいな」と思ったら増やせばいいし、
「やっぱり自給は無理!」と思ったら、買う専門に戻ってもいいんです。
ただ、一度でも経験するときっと意識が変わります。
自給できない分、災害時のための保存食を買うようになったり、
あるいは地元農家と提携して野菜セットを定期購入する事で、
有事の際に流通の乱れのあおりを受けた場合の保険をかけたりと、
“命を繋ぐためのリスクヘッジ”が出来るようになるかもしれませんよ。
畑はどうすれば始められる?
現状では農地の取引は農家しかできない事になっています。
ですので、農地を買いたければ農家となるための条件を満たすか、
農家の嫁か婿になる必要があります。
これはなかなかにハードルが高いですよね。
(「それでもいい!」という方は調べてみてもよいでしょう)
ただ、しつこいようですがここでテーマにしたいのは
自給自足の“はじめの一歩”です。
ご自宅にちょびっとでも庭があるなら、
その庭で始めてみてもいいでしょう。
僕も保育園児の頃に庭でラディッシュを育てた経験があります。
これなら実家暮らしの自宅警備員にだって出来るでしょう?
保育園児に出来たんですから。
(案外、それによって自分の進むべき道がみつかるかもしれませんよ)
あるいはマンションなどで、庭はなくてもベランダがあれば、
プランターを使って挑戦してみてもよいでしょう。
それもなければ
屋内の日当たりの良い場所に植木鉢を置いてやってみてもいいし、
水に浸したスポンジの上で
アルファルファやカイワレ大根を育ててみてもいいでしょう。
いかがですか?
意外と出来る事、あるでしょう?笑
その上で
「やっぱり畑がいいんじゃ!」
という方は貸し農園や市民農園を探してみてもいいし、
お金と時間に余裕がある方は、クラインガルテンという菜園付きの別荘
(先のダーチャみたいなものですね)を借りてみるのも面白いでしょう。
そこまで踏み切れない方は、
とりあえず農業体験のイベントなどに参加してみるのもありです。
出来れば種を播くところから体験するのが吉ですが、
この際、イチゴ狩りやシイタケ狩りとかからでも
スタートとしては十分すぎるくらいです。
つまり、どんな形でも、どんな小さな規模でもいいので、
「まずは体験してみ?」という事です。笑
さっきも述べましたが、
体験しちゃえば意識が変わっちゃうわけですから。
まとめ
というわけで、
今回はリスクマネジメントの観点からみた“食べ物の自給”について、
簡単ではありましたがお話しさせて頂きました。
冒頭でお金の重要性についても触れましたが、
“食べ物を育てる”というのは現代ではそれなりにお金がかかります。
「お金がなければ食べ物を育てればいいじゃない」
とはなかなかいかないのが現状です。
ここまで食べ物の自給について語っておいてなんですが、
正直なところ、もしあなたの経済状況が芳しくない場合は
まずはある程度のお金を稼ぐ事を先にした方が良いかもしれません。
これはある意味、稼いだお金の投資先なのです。
株と同じように、蕪(カブ)に投資するわけです。
そして、投資とは“守り”です。
ですからあなたが農家の生まれ、
もしくは土地も種も道具もご縁や貰い物で賄える強者でない限り、
余剰資金の中から少しずつ自給菜園に投資していく、
というスタンスでいく事をオススメ致します。
これらをご理解頂いた上でもし、
あなたが少しでも自給菜園にご興味をお持ちになったなら
おそらく次の段階としては、
「で、どうやって育てるの?」
あるいは、
「どうせ育てるなら無農薬がいいんだけど…」
となるんじゃないかと思います。
ですので次回は、
僕の実践している自然農について
お話をしたいと思います。
次回はこちら:
【自然農(前編)】それが自給菜園にオススメである理由
最後までご覧下さり、誠にありがとうございます。
素敵なムカデライフを。